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【登壇レポート】AIロボティクスの現在地と未来 ― シミュレーションから実機制御、そして生成AIとの融合まで

こんにちは、株式会社ロボケン 代表です。

去る2025年11月17日(月)、株式会社日本テクノセンター様主催のオンラインセミナーにて、「AIによるロボット動作の効率的な学習方法と高精度な制御への応用 ~デモ付~」というテーマで登壇いたしました。

朝10時30分から夕方17時ごろまで、休憩を挟みつつの約5時間。長丁場ではございましたが、多くの技術者・研究者の方々にご参加いただき、AIロボティクスの最前線を共有する非常に濃密な時間となりました。本記事では、当日お話しした内容の要点と、私たちが目指すロボティクスの未来について振り返りたいと思います。

ヒューマノイドロボット

 

ロボット制御のパラダイムシフトと「4つの壁」

 

講義の冒頭では、ロボット制御におけるパラダイムシフトについて触れました。

従来の「ルールベース制御」は、予測可能な環境では有効ですが、未知の状況や複雑なタスクには限界があります。現在、私たちはAI(強化学習)を用いた「学習ベース制御」への転換期にいます。しかし、この移行には「サンプル効率性」「Sim-to-Realギャップ」「安全性」「計算コスト」という「4つの壁」が立ちはだかります。

今回のセミナーでは、これらの壁をいかにして乗り越えるか、その具体的な技術論を中心に展開しました。特に強化学習アルゴリズム(PPO, SAC, A3Cなど)の仕組みや、近年注目を集める「世界モデル」がもたらす学習効率の革新性については、本セミナーの技術的な核心部分として、重点を置いて解説いたしました。

 

 

仮想実験場「シミュレーション」の徹底活用

 

本セミナーの核心部分である第2部では、「仮想実験場としてのシミュレーション」に焦点を当てました。

実機での学習は、時間・コスト・安全性の面で大きなリスクを伴います。そこで重要になるのが、NVIDIA Isaac Simや、従来比43万倍の高速化を実現したGenesisといった最新シミュレータの活用です。

しかし、シミュレータで完璧に学習しても、実機では動かない「リアリティギャップ」の問題は避けられません。これに対し、物理パラメータや視覚要素をランダムに変化させて汎化性能を高める「ドメインランダム化(Domain Randomization)」や、GANを用いてシミュレーション画像を実写風に変換する「ドメイン適応(Domain Adaptation)」といったSim-to-Real転移技術の実装詳細を解説しました。これらの技術は、これからのロボット開発において「知っていて損はない」ものではなく、「知らなければ開発が始まらない」必須教養となりつつあります。

 

 

実装とビジネス視点:ROIと汎用人型ロボット

 

技術はビジネスに実装されて初めて価値を生みます。第3部では、製造・物流・サービス分野における具体的な応用事例とともに、投資対効果(ROI)の分析手法についても踏み込みました。

単なる省人化だけでなく、品質安定化やデータ蓄積による将来的価値を含めたROIの算出モデル(製造業A社の事例ではROI 74.8%など)を提示し、経営層への説明ロジックとしても活用いただける内容を目指しました。

また、昨今急速に民主化が進む「汎用人型ロボット(ヒューマノイド)」についても、Unitree H1やTesla Optimus等の事例を挙げながら、その進化の系譜と今後の可能性を議論しました。特定のタスク専用機から、ソフトウェアの更新だけで多様な役割をこなす汎用機への移行は、私たちの社会インフラを根底から変えるポテンシャルを秘めています。

 

 

未来展望:生成AIとイノベーターAI

 

そして最後に、AIロボティクスの未来像として「生成AIとの融合」と「イノベーターAI」についてお話ししました。

大規模言語モデル(LLM)がロボットの「頭脳」となり、曖昧な指示からタスクを分解・実行する未来はすぐそこに来ています。さらに、シミュレータ内でロボット自身が人間も思いつかない解決策を”発明”する「イノベーターAI」の概念は、創造性の領域までもがAIによって拡張されることを示唆しています。

 

 

結びに

 

今回のセミナーでは、座学だけでなく、Isaac SimやGenesisを用いたPythonコードレベルでの実装デモも行いました。参加者の皆様が、理論だけでなく「明日から使える技術」を持ち帰っていただけたのであれば幸いです。

株式会社ロボケンでは、こうした最新のAI技術とロボティクスを融合させ、実社会の課題解決に取り組んでいます。「AIロボティクスは、人間の知能を機械に移植し、それをさらに超える技術の開拓」です。私たちはこれからも、その最前線を走り続けます。

 

ご参加いただいた皆様、長時間にわたり誠にありがとうございました。

また、今回参加できなかった方も、AI導入やロボット開発に関するご相談がございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。

 


■セミナー概要

日時: 2025年11月17日(月)10:30~17:00

タイトル: AIによるロボット動作の効率的な学習方法と高精度な制御への応用 ~デモ付~

主催: 株式会社日本テクノセンター

詳細URL: https://www.j-techno.co.jp/seminar/seminar-76078/

 

 

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